01)HAND TO HAND


俺の名は影山マモル。
いや、元影山マモルというべきか・・・まだBODYがあったころ、そう呼ばれていたって意味だ。
訳あって今、俺にはBODYがない。
どう説明していいのかわからないが、
つまり俺は、世間一般で言われるところの霊体。
わかりやすく言うと憑依霊だ。

俺が生身の身体を失って(?)から、かれこれ2年になる。生きていりゃあ39歳ってことだ。
そのあたりの事情は、おいおい語っていこうと思う。

オカルトマニアやあの間抜けぞろいの霊能者と自称している奴らからは、
守護霊とか背後霊とか呼ばれることもあるが、
俺は、海の向こうのもうちょっとましな研究者の間で、
“HAND TO HAND”と分類されている種類の霊体だ。

霊体には、“STAY”・・・俗に地縛霊と呼ばれている一定の場所にしばられた奴らや、
“MOVE”と呼ばれている雲のようにフラフラと世間をさまよっている奴らもいるが、
俺はなんの因果かわからんが、“HAND TO HAND”・・・そう、
BODY同士の接触を媒介して人から人へ憑依していく種類の霊体だ。

俺には、憑依するBODYは選ぶことができない。
憑依しているBODYの手が他の誰かの手に接触した途端、そのBODYに自動的に乗り移るわけだ。

一般的に憑依霊と聞くとかなり恐ろしいイメージがあるが、
あんなのは下等な動物霊のしわざで、俺が憑依したところで別にどってことはない。
逆に、守護霊・背後霊という概念で、
何か、俺がそのBODYを守ってたり導いたりしているかのような誤解もされているが、
そんな偉そうな事もしない。てゆか、そんなことはできない。
まぁその気になれば、そのBODYの思考や行動に影響を与えることはできるが、それは俺の流儀に反するし、
俺自身、憑依する相手さえ選べない、言ってみりゃ、現世と霊界の間にさまよう半端者だ。
そんな他人様をどうこうできる余裕なんてありゃしない。

霊によっちゃあ、若い女ばかりを移り歩く奴や、酒飲みばかりを狙うアル中、デブ専等、
テメエの嗜好で憑依の相手を選り好みしている輩もいるが、
そういった奴らは、BODYの思考や行動に思いっきり干渉して、つうか操作して、
おのれの憑依先をコントロールしているわけだ。

俺はつとめて憑依したBODYには干渉しないことにしている。
俺自身、まだこんな身体(?)になっちまたことを自分自身の中で整理できているわけではないし、
BODYと何らかの精神的なつながりや、思い入れを抱いてしまったらろくな事はないのはわかっている。
どっちみち、遠からず他のBODYに憑依していく運命なのだから、
刹那的とでもいうか、ニヒルなただの通りすがりの憑依霊でいるのが、今の俺には性にあっている。

永遠にBODYからBODYをさまよい歩かなきゃならない自分の運命を恨んだ時期もあったが、
2年もたつと、俺の中では、そんな事はもうどうでもいいことになってきている。
おのれの運命を恨んだところで始まらないし、成仏する方法があるわけではない。

これも何かの縁っていうか意味のあることなのかもしれないし、
どうこう言おうが思おうが、現実に俺は今、“HAND TO HAND”なのだ。




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