02)影山マモル


“HAND TO HAND”になる前の俺は、つまり、影山マモルだったころの俺は、
どってことないうだつの上がらぬ、ただの中年サラリーマンだった。

毎朝決まった時間に通勤電車に揺られ。可も不可もなく仕事をこなし。仕事が終れば即帰宅。
郊外の3LDKの借家には、職場結婚した3つ年下の女房と、中学1年の娘と小学校5年の息子。
時々する釣り以外には特別な趣味はなく、ガレージには中古のミニバン。
晩酌程度に酒は飲むが、煙草は10年まえにやめ、もちろん浮気や不倫もない。

俺の世代のほとんどがそうであったように、
高度成長真っ只中の平和な日本で生まれ育ち、
みんながそうだから・・・という理由だけで学校に通い。
普通に勉強して普通にサボり、普通に悪さして普通に卒業。
そしてそのまま普通に就職。そして結婚、子育て・・・
何事もなく暮らしていたならば、きっとその後も普通に定年して普通な老後、
そして普通に成仏していたに違いない。

俺はそんな人生に疑問を持つこともなければ、将来についての不安を持つこともなく、
言ってみれば“流れ”で生きているとでもいうか、
いや、その“流れ”に身をまかせていることさえ意識しないような、
中流で平々凡々に“普通”に“幸福”な日々を送っていた。

そして、それがそのまま最後まで続く・・・と、そう思っていた。




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