ぶっちぎりインターネット

第5回『世紀末ハイパーヲタク烈伝!』




“おたく”“オタク”“ヲタク”そして“ハイパーヲタク”。
世紀末を迎え、あのヲタク達も進化を遂げた!
・・・と言うよりも・・・どこをどう間違えたのか、
どこかでボタンをかけ違えたまま、どうもおかしな方角に行ってしまったヲタクがいる。
今回は、その愛すべき“ハイパーヲタク”の世界をじっくり堪能して下さい。だははは



『横浜銀蝿のぶっちぎりインターネット』(DOS/V USER 9月号 原稿)


《タイトル》
世紀末ハイパーヲタク烈伝!編


《本文》

きなりで何なんだが俺は“ヲタク”が好きだ。
マジすごいと思っている。
世間やマスコミからはとかく迫害されがちな彼等。
これを読んでいる諸君の中にも、
“ヲタク”と聞いただけで拒絶反応を示す方もおられるに違いない。

ほとんどの人の“ヲタク像”は、
デブで、眼鏡で、汗かきで、オイリーで、いっつも紙袋持ってて、
さもなきゃ、青白くて、ヒョロヒョロで、根暗で、鼻毛伸びてて、
そんでアニメやアイドルやゲーム系のイベントにひとりぼっちで来るヘンなヤツ。
みたいなイメージではあるまいか。

たしかに、それ系のイベントに足を運ぶと、
そういった絵に書いたような人物がウジャウジャなのも確かだし、
会場は色々な意味で熱気ムンムン湿気ムシムシだったりもする。

しかし、そんな事で“ヲタク”に眉をひそめているあなた。
イメージや体臭で人を判断してはいけないのだ。
彼等の、入り込んだ対象に向けるものすごいエネルギーと、
ディープな知識は驚愕に値するのだ。

そもそも好きな事や物に心底入り込めるなんてのは、
それだけで偉大な才能なのだ。
“なんとか好き”や“かんとかマニア”を通り越して、
“なになにヲタク”と呼ばれるまでいく為には、
そりゃもうハンパじゃない執着と労力、
そして才能が必要じゃないかと俺は思うのだ。

そうそう、話は脱線するが以前にテレビ番組でカレーヲタクの選手権があったのを見た。
テーブルの上には皿が数枚。その皿には一粒のご飯
そしてその一粒のご飯にはカレーのルーが一滴たらしてある。
出場者はなんと、それを食べて店名とカレーの種類を答えるのである。
げげげげ。ここまでくると、これはもうすでに超能力の域である。

実際、人類の技術の発展は偉大なる“ヲタクパワー”と、
先月ここに書いた、“悲しい脊髄反射のマンパワー”によってもたらされてきたのだ。

読者諸君もここらで“ヲタク”についての認識を
是非改めていただきたいと思っている今日この頃である。

と、ここまではただの能書き、ここからが本題だ。

正直に言わしてもらっちゃえば、
俺としては普通のヲタクにはま〜るで興味はない。
っていうか、勝手に好きにやって下さいってカンジなだけだ。

でもでも、くくりとして最初から全然普通じゃない彼等をつかまえて、
“普通のヲタク”ってのも、また妙な言い回しだが、
つまりは“まっとうな”とか“ストレートな”とか
“ノンケな”って意味と理解してもらいたい。
とにかく、ただのヲタクには用はないのだ。

彼等だって俺に、とやかく書かれる筋合いはないと思うだろうし、
俺もべっつになんだかんだ書きたいとは思わん。
今後の人類の進歩と発展の為に、よりマニアックに、よりサイコに、
おのおの我が道を極めていってもらいたいと思っているだけだ。

俺が今回特に書きたいと思ったのは、
そうではない、愛すべき屈折したヲタク達である!

凡人の俺なんかから見たら、
まったくどう考えても本来の筋道からははずれてしまっているとしか思えない、
常人の理解の域を超越したハイパーなヲタク達の事だ。

おそらく彼等は、対象に入り込んで行く過程のどこかでボタンをかけ違い、
ついついそのまんま、どうもおかしな方角に向かってしまったのであろう。

蒲田に住む33歳のS氏。職業はSEである。
彼は屈折率180°の変態系ハイパーヲタクだ。

もちろん彼は、普通の意味でも立派なパソコンヲタク。
SEとしてもかなりのスキルを持ち、幸運にも大好きなコンピュータでメシを食っている。
と、ここまではよくある話。

ところが、ここから先が問題なのだ。
彼の場合、
なんとマシンが、いつの頃からか性愛の対象になってしまったのだ!

当然独身である彼の部屋には、
一般的な1人暮らしの独身男性と同じ様に、壁にピンナップがベタベタと貼ってある。

普通ならば、プレイボーイの金髪美女とか、好きな女優やアイドル、
さもなきゃ憧れのロックスターや車、バイクとかのポスターや写真だ。
しかし彼の部屋の壁のメインは、
こともあろうにスケルトンのマシンのポスター。

彼の目にはその画像が、俺達の感覚で言うと、
さしずめスケスケのネグリジェを着た藤原紀香に見えるらしいのだ!

その他にも、スリムなボディのマシン、ポッチャリとしたマウスのピンナップ、
内部があらわに写っている筐体透視図等で部屋中いっぱいである。

彼は、マシンのボディのカーブにそそられ、マウスの分解掃除に顔を赤らめ、
マウスボールを口に含み、そして極めつけは、
なんとUSBのソケットのに舌をインサートする。

俺としては、くれぐれも感電だけは注意してもらいたい所ではあるが、
とにかく世界広しと言えども、
パソコンのスペック読んで勃起し、
カタログの写真見てヌケる男は彼只1人なのではあるまいか?

もちろん彼も愛機をイカセる為に、
さまざまな運指テクをマスターしている。
思考速度のブラインドタイプなんて当たり前。
なんたって一番の得意技は超速マウスクリック攻めだ。
それゆえ彼の右手の人差し指第1関節には“力こぶ”と、
指先には“クリックだこ”ができている。

今日もS氏は、魅惑的なマシンのピンナップにかこまれ、
愛機のキーの肌触りに酔いしれながら、
徹夜のプログラムを続けている。 了








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